パナンドル川岸に位置するセプパ村から西に約50km、カラハリ西部の平坦な不毛の地に、ツォディロ・ヒルズの4つの丘の切り立った珪岩の断崖が堂々とそびえています。4つの丘は一列に並んでおり、サン族は、一番高い410mの丘を「男の丘」、次に高い300mで「男の丘」のほぼ3倍の総面積を誇る丘を「女の丘」と呼んでいます。そして女の丘から約2km離れ、さらに小さい40mの丘は「子供の丘」と呼ばれています。子供の丘から2.2km北西に一番小さい名もない丘があります。この小さな丘は男の丘の最初の妻であったものの、男の丘が、より標高の高い女の丘と出会って結婚してしまったために捨てられたという伝説が残っています。
著名な作家、ローレンス・ヴァン・デル・ポスト卿は、著書「カラハリの失われた世界」の中で、ツォディロの謎めいた霊的な性質について触れています。ツォディロ・ヒルズを訪れた際、ローレンス卿のカメラがどういうわけか故障し、テープレコーダーも動かなくなったうえ、彼のグループは3日連続で朝にハチの大群に襲われたのです。ガイドの忠告を無視し、グループの仲間2人がツォディロの周辺で生き物を殺してはならないという長い間の掟を破って、道中、イボイノシシとスタインボックを殺したため、ツォディロの精霊の怒りに触れたのだと説明を聞いたローレンス卿は、謝罪の手紙をしたため、岩壁の下に埋め、ようやく精霊の怒りは収まったといいます。その岩壁は、これに因んで「ローレンス・ヴァン・デル・ポストの壁」と呼ばれています。
ツォディロは、何千年もの間この地に生きてきたサン族にとって非常に重要な場所です。サン族は、ツォディロ丘陵は死者の霊の休息地であり、女の丘にある洞窟には様々な神々が住んでいて、そこから世界を統治していると信じています。最も神聖な場所は男の丘の頂上付近で、最初の精霊が世界を創造した後にここでひざまずいて祈ったという伝説が残っています。サン族は、それはまだ岩が柔らかかった頃の出来事であったため、今でも灰色の岩に精霊の膝の跡が残っているのだと信じています。丘陵のそばで狩猟をしたり何かを死なせたりすると、こうした神々が災いをもたらすと考えられています。同じようにこの地域に住んでいるハンブクシュ族は、丘陵は神が人間を地球上に生み落とした場所だと信じています。
考古学的研究により、この地域には少なくとも10万年間、人間が居住していたことが明らかになりました。4つの丘は、22 km2の範囲に点在していますが、全ての丘で岩に描かれた壁画が見つかっています。最も見る価値のある絵は女の丘の北端にあります。
南部アフリカでは、他の地域でも壁画が見つかっていますが、ツォディロが際立って遠い場所にあるという事実も、ツォディロ独特の不可解で不思議な雰囲気に拍車をかけています。距離的に一番近いものでも、250kmも離れた場所にあります。さらに、絵のスタイルや特定のイメージが描かれている頻度という観点からも、ツォディロの壁画は南部アフリカ地域のその他の壁画とは大きく異なっています。多くは単体で、半分以上がエランドなどの野生動物や家畜を描いたものです。中には場面を描いたものもありますが、何かを物語っているように見えるものはほとんどありません。多くは輪郭だけで描かれた略画や幾何学模様です。ほとんどの岩壁画がブッシュマンによって描かれたものであることはほぼ間違いありません。
カバのプールには、その名の通り、たくさんのカバが生息しており、プールを見下ろす観察台から、ゆっくり観察できます。この近くにはかつてブハクウェ族の村がありましたが、野生動物保護区が作られたことにより、人々は1963年に、北のゲート付近の現在のクワイ村に移動しました。村の人口はわずか約300人です。クワイ村には日用品店がいくつかあるので、何か所持品が底を突いた場合や、よく冷えた飲み物を飲むという贅沢をしたいときには非常に便利です。旅行者向けに美しいバスケットを販売する村人もいます。
モレミを訪れるベストシーズンは乾季です。特に7月から10月は、雨季にできた多くの水たまりが干上がり、野生動物が水のあるところに集中するので、動物観察に最適です。5月から8月にかけての冬場は、夜は非常に寒くなりますが、日中は晴天に恵まれ快適な暖かさとなります。10月から、雨が降り始める11月下旬または12月上旬までは、日中も夜も非常に暑くなります。
保護区では全体的に蚊が多いので、特に雨季の間は、保護区を訪れる前、滞在中、そしてその後の4週間はマラリア予防薬を服用することを強くおすすめします。また、飲用水は煮沸するか化学処理を施さなければなりません。
ツォディロで最も知られている絵のひとつに、ペニスが勃起した男性の略画があります。熱やエネルギー、創造、成長といった概念を表しており、トランスダンスと関わりがあるものと思われます。トランスダンスは、通常とは異なる意識状態を作り出すもので、このダンスの踊り手は病人を癒やし、自然世界と超自然世界をコントロールできるとブッシュマンは信じています。
絵の模様にも意味があり、全ての生物に健康と繁栄をもたらす雨を降らせることに関連しているようです。神話上の蛇を描いた壁画は、これを裏付ける可能性があります。なぜなら、ブッシュマンとバントゥー系民族の神話では、蛇は雨と関連付けられているからです。壁画を描くのに選ばれた場所も、丘陵の霊的かつ宗教的な重要性を示しています。その多くは、標高が高く、見晴らしの良い、アクセスが困難な断崖にあります。これは空と大地に対する権力と支配、または地上の生物に対する保護を表しています。壁画には偶然の要素はほとんどないと考えられています。
近年、ツォディロ・ヒルズで行われた考古学調査により、南部アフリカへの人々の移住に関する以前からの定説に異議が唱えられ始めました。
科学者により、小さな湖の湖岸線跡が確認されました。ここで発見された珍しい遺物の中には、2万年以上昔に動物の骨で作られた釣り針があります。その他の考古学的発見としては、ツォディロ一帯の採掘場が挙げられます。西暦800年から1100年の間にここに住んでいた人々は、黒いヘマタイトと、恐らくは雲母の採掘に従事し、アフリカ内の広範囲に及ぶ交易網を通じて、その取引を行っていたという証拠が見つかっています。
ツォディロ・ヒルズは歴史的に重要な岩壁画が存在する世界有数の場所であり、何千年にも及ぶ人間の暮らしを描いた4,000点を超える壁画が500か所にわたって残っています。近くにはサン族の小さな集落があり、男の丘のそばにはハンブクシュ族の村があります。これらの集落ではガイドを手配することができます。
ツォディロ・ヒルズに向かう道は非常に険しく、四輪駆動車でしか進めません。マウンからシャカウェに向かう道路で、ツォディロへの分岐点はセポパのすぐ南にあり、国立博物館の案内標識が目印となっています。この地域には指定キャンプ場がなく、どこでもキャンプできますが、くれぐれもツォディロに敬意を持って行動してください。