あまり知られていないマカディカディ・パン国立公園は、ボツワナ北部のフランシスタウン道路のマウンとナタのほぼ中間地点に位置しています。マウンから東に160kmのところに公園のメインの入り口に向かう小さな脇道があります。また、公園から最も近いロッジがあり、燃料や生活必需品が手に入るグウェタ村からは西に45kmです。
舗装された幹線道路から脇道に入り、でこぼこした砂利道を8km進むと、公園の入り口ゲートに到着します。ここで入園料を支払います。公園内は悪路で、多くは砂道なので、四輪駆動車が必須です。また公園の奥地で車が故障してしまった場合、他の車が通りかかって助けてくれるまで、かなり長い時間待たなければならないので、十分な水を持参し、2台以上で一緒に移動するほうが良いでしょう。
公園内には、キャンプできるエリアが2か所あります。ひとつは、ンジュカ丘陵で、広大な開けた平原を見下ろすキャンプ場が2つあり、穴式トイレが2つある以外は開発が行われていません。雨季の始まりにはシマウマとヌーの大規模な移動を目撃するチャンスがあります。ンジュカ丘陵はメインの入り口ゲートから26km南にあり、ここでは水が手に入らないため、キャンプする場合は必要なものを全て持参しなければならないことにご注意ください。
もひとつは、ボテティ川岸のクマハ公共キャンプ地で、メインの入り口から48km南西にあります。対岸にはクマハ村があり、公園のもう一つの入り口となっています。ここには、水浴び設備と給水塔があります。地下水をくみ上げているため、ここの水は、蛇口をひねった時は非常に不快な硫黄のにおいがしますが、放置しておけばにおいはましになります。しかし、飲料水は持参されることをおすすめします。クマハ村では、限られてはいるものの必要な食糧品が手に入ります。クマハという名前は、村の近くにある、食用の塊茎植物が自生する泉に由来しています。
ボテティ川は、かつては毎年6月から7月にかけてオカバンゴから流れてくる水が入り込み、流れが強く、幅の広い水路でしたが、その後、水量が衰えて一続きの水溜りになり、1992年9月についに流れは止まってしまいました。最後に数か所残った池の水を、人間や家畜、野生動物が競い合うように使っています。現在の干ばつのサイクルが早く終わることを誰もが願っています。
マカディカディとは、広大な生物のいない土地を意味する名前で、ある言い伝えが存在します。条件のよい移住先を求め、グウェタとボテティ川の間にある土地を探索しにグウェタを出発した人々についての話です。無限の乾燥した大地を、地平線上に輝く水をたたえた大きな湖があるように錯覚し、彼らは、それに引き付けられて一年で最も乾燥した時期にこの地に入ってしまいました。彼らはのどの渇きにひどく苦しみ、目と鼻の先にあるように見えていた命の水にたどり着こうとして、急いで湖を目指し続けました。やがて一人、また一人と彼らは倒れ、亡くなっていきました。
しかし、マカディカディは常に乾燥しているわけではありません。公園の南部、東部、北東部に位置するパンは11月中旬に水で満たされ、4月か5月まで水が保たれます。乾燥した大地は広大な湖に姿を変え、目を見張るほどの水鳥の大群が集まり、ヌーやシマウマの大規模な移動が起こります。この時期の壮大な水景色に、実際に車で近づくことができないのは残念ですが、このエリアの上空を飛行機で飛ぶことのできる幸運な方は、息を飲むほど美しい景観をした水の楽園を見ることができます。
マカディカディは、元は国有地でした。乾燥した内陸地域に人が居住したことはありませんでしたが、干ばつの時期には、周囲の村の住人はここで家畜を放牧することが許可されており、状況が好転したら家畜を自分の村に戻していました。マカディカディは1970年に野生動物保護区に指定され、1992年12月に境界が広げられ、国立公園としての地位を獲得しました。現在、公園は約4,900 km2に広がっています。
全ての公園や保護区と同じように、ここではマラリア予防薬の服用が強く推奨されます。公園内を移動する際は、緊急用の水と食料を積んだ四輪駆動車が必要です。実際に砂道を走る前に四輪駆動に切り替えておけば、砂道にはまって抜け出せなくなる可能性が最低限に抑えられるだけでなく、他のドライバーのためにも道の表面を荒らさずに済みます。
最も乾燥した時期のパンの印象的な姿を目撃し、雨季の水の楽園への変化を体験し、ヌーとシマウマの移動を見るためにも、この公園を乾季と雨季にそれぞれ訪れてみるとよいでしょう。マカディカディで数日過ごし、隣接する姉妹公園であるナイ・パン国立公園にも同じくらいの期間滞在することで、旅行者はそれまでにしたことのない経験をすることでしょう。マカディカディ、それは時間を超越した見渡す限りの荒野なのです。