中央カラハリ野生動物保護区は、1961年に設立された世界で2番目に広大な野生動物保護区です。デンマークやスイスより広く、レソトとスワジランドを合わせた面積より大きい5万2,800km2の面積を誇ります。ボツワナの中央に位置するこの保護区の特徴は、広大な開けた草原と「パン」と呼ばれる塩低地、古代の川床です。様々な樹木や低木が茂る北部の砂丘地帯、中央部の平坦なブッシュ地帯など地形は多様です。南部のほうが木々が多く、南部から東部にかけてはモパネの森が広がっています。雨は稀にわずかに降る程度で、年間降水量は場所によって170mmから700mmと幅があります。
何千年もの間、この地域周辺に居住してきた部族は、世界中で一般にブッシュマンとして知られていますが、より適切な呼称は「バサルワ」または「サン」といいます。バサルワは、元々は定住せず、狩猟採集生活を送っていましたが、生活様式は時代とともに次第に変化し、現在では集落に定住しています。中には中央カラハリ野生動物保護区内の南半分にある集落もありますが、ボツワナ政府は、バサルワに近代的な施設や学校、診療所などを提供し、現代社会に溶け込ませるために、保護区外の地域への移住を促しています。
その他のごく最近の居住者としては、保護区のデセプション・バレーと呼ばれるエリアで主にカッショクハイエナを長年研究していたマーク・オーウェンズとデリア・オーウェンズがいました。オーウェンズ夫妻は、一等地の「孤立森林地帯」の中にあるデセプション・バレーの北の区画にキャンプを設営していました。しかし現在では、環境意識が高まったために孤立森林地帯はキャンプには利用されていません。オーウェン夫妻が執筆した本「Cry of the Kalahari」は、以前はほとんど人が訪れることのなかったこの地域に読者の関心を引き付け、現在でも多くの人が中央カラハリを単に「デセプション(欺き)」と呼びます。「デセプション」という呼び名は、パンの乾いた表面が、そばに近づくまでは、あたかも水で満たされているかのように見える様子から来ています。
カラハリ砂漠の横断
主に野生動物が密集しているのは、この広大な保護区の北部にある観光客の多いエリアですが、アドベンチャー好き、かつ必要なものを全て自己調達できる方は、南端部のクーツェから北部まで保護区内を縦断することができます。この場合、四輪駆動車で自然の中を最低2日かけて移動することになります。あまり設備は整っていませんが、モラポやホペ、バペ、カカには、キャンプ場があり、夜間の宿泊が可能です。カラハリを横断してみたい方は、燃料、食糧、水を全て自分で調達するだけでなく、基本的な予備部品とサバイバルキットを常備し、2台以上の車でグループを作って移動する必要があることに注意しなければなりません。
アクセス
保護区への入り口は、南部のクーツェ経由の入り口と、西側のカデ、北東側のマツウェレの計3か所あります。カデ・ワイルドライフ・キャンプ付近にキャンプ場が2か所あるカデには、ハンツィとカンを結ぶ道路を、ハンツィから約36km南の、標識で示されている地点で東に曲がり、なだらかな砂の道を160km進むと到着します。ハンツィからは約3時間かかります。保護区を訪れる方はハンツィで燃料を満タンにし、滞在期間中に足りなくならないよう十分な燃料を確保してください。カデに到着したら、旅行者の方はワイルドライフ・キャンプ内にある旅行案内所でチェックインする必要があります。
マツウェレには、ラコプス経由で行くことができます。マツウェレのチェックイン地点から55km手前にあるラコプスでは、大抵いつでもガソリンとディーゼルが手に入ります。ラコプスには、マウン、モトピ、クマハ、ツォイを通って北から、またはマハラペ、セロウェ、レタカネ、モピピを通って南から行くことができます。またマツウェレには、マウンから57km東に進み、マカラマベディの交差点で右折し、村に向かって20km進み、動物用のフェンスの西側で右折しても行けます。クケの角の動物用ゲートに到着するまでこのフェンスに沿って約80kmの砂道を南に進み、その後も保護区の東の境界までさらに21km進めば、マツウェレからわずか9kmの入り口ゲートまでたどり着くことができます。このマウンからの近道は約3時間半かかります。
キャンプ施設
マツウェレは、デセプション・バレーやサンデー・パン、レパード・パン、パッサルゲ・バレーといった地域にある指定キャンプ場(設備は十分でありません)へのアクセスポイントとなっています。パイパー・パンのキャンプ場にはマツウェレからでもカデからでも行くことができます。野生動物の観察に適したパッサルゲ・バレー沿いやパッサルゲの泉があるエリアの南には、新しい道とキャンプ場ができ、パイパー・パンやデセプションに向かう道とつながりました。この道沿いの、中央カラハリらしさがよく表れているエリア内に、新しくタウ・キャンプ場がオープンしました。
こうした未整備のキャンプ場の多くには、穴式簡易トイレを設置する計画が立てられていますが、このトイレが設置されるまでは、旅行者は自分で穴を掘って小さなトイレを作る必要があります。特にトイレットペーパーの処理に注意し、人間がそこにいた痕跡を残さないようにしなければなりません。薪は木の多い場所から集め、孤立森林地帯から取ってくることはしないでください。
たき火で出た灰はキャンプ場を離れる前に地面に埋めなければなりません。可燃性ごみは燃やし、不燃性ごみは入り口ゲートにある穴まで持ち帰ってください。飲用以外の水は、カデのワイルドライフ・キャンプおよびマツウェレの入り口ゲート、旅行案内所で入手できます。ビジター用の簡素なシャワー施設をマツウェレの入り口ゲートに設置する計画もありますが、他の砂漠地帯でもそうであるように、こうした用途に使う水の提供は難しいのが現状です。
野生動物
キリンやカッショクハイエナ、イボイノシシ、ワイルドドッグ、チーター、ヒョウ、ライオン、オグロヌー、エランド、ゲムズボック、クドゥー、レッドハーテビースト、スプリングボックなどの野生動物を観察するベストシーズンは、動物がパンや渓谷に集まることの多い12月から4月です。旅行者がテントを立てずに外で眠ることは、危険で無謀なことです。テントはヘビやサソリなどが侵入できないようにしっかり閉まっていることを必ず確認してください。無用にライオンやハイエナの注意を引かないよう、食料品等はテントの中で保管せず、車の中にしまっておきましょう。