ボツワナで2番目に広大な国立公園であるチョベ国立公園は1万566km2の面積を誇り、アフリカ大陸有数の野生動物の密集地帯となっています。野生動物が多数存在するというユニークさと、正真正銘のアフリカの大自然は、一生忘れられないサファリ体験を提供してくれます。
公園は、最北東部のチョベ川沿いに広がる青々とした草原と鬱蒼とした森林から成るセロンデラ、マバベ・ゲートから約50km北に位置する西部のサブティ湿地、北西部のリニャンティ湿原、中間に位置する暑くて乾燥した内陸地という全く異なる4つの生態系に分かれています。
カサネからは、新しい舗装道路を進み空港を通り過ぎればセドゥドゥ側の入り口に到着します。ンゴマに向かって舗装道路を進み続けるのでなければ、全員ここでチェックインし、入園料を払う必要があります。公園内を広範囲にわたって移動するには、四輪駆動車は必須です。深い砂があるエリアではドライバーの技術と車の性能が試されますが、その先には、高い確率で、野生動物に遭遇するチャンスが待ち受けています。
現在公園となっているこの場所に元々住んでいたのはサン族でした。サン族はボツワナでは別名バサルワとして知られています。サン族は、水や野生の果物、狩りの獲物を求めて移動する狩猟採集民族でした。後にバスビヤ族がサン族に合流し、さらにその後、1911年頃にセコマ率いるバタワナ族が合流しました。19世紀末から20世紀初頭に国土が様々な土地保有制度によって分けられた際、現在国立公園となっているエリアの大部分は王領として分類されました。野生動物を絶滅から守り、観光客を誘致するために、この地域に国立公園を作るという案は、1931年に初めて議論されました。
1932年に、チョベ行政区の約2万4,000km2のエリアが禁猟区に指定され、翌年には保護区域の面積は3万1,600km2に広がりました。しかし、ツェツェバエがひどく繁殖したことにより、1943年に計画全体が頓挫してしまいました。1957年に再び国立公園を作る案が浮上し、2万1,000km2のエリアが野生動物保護区として提案され、最終的には1960年に、それより小さい面積がチョベ野生動物保護区に指定されました。その後、1967年に保護区は国立公園に指定され、ボツワナ最初の国立公園となりました。
かつてセロンデラには林業を基盤とした大規模な集落が存在し、現在でもその名残を見ることができます。この集落は次第に遠くへと移動していき、1975年についにチョベ国立公園内に居住する人間はいなくなりました。1980年と1987年に公園の境界線が変更され、公園は現在の規模に拡大されました。
チョベ国立公園の見どころは何と言ってもゾウの数の多さです。まず、チョベのゾウは、現存する恐らく最も大きなゾウの個体群の一部です。この個体群はボツワナ北部の大部分とジンバブエ北西部に生息しています。ボツワナのゾウの個体数は現在推定約12万頭となっています。1900年代初頭の数千頭から、着実に増え続け、1970年代と1980年代に他の個体群の大部分が被害にあった大規模な密猟も免れることができました。
チョベのゾウは移住性で、乾季にはチョベ川とリニャンティ川周辺に集まり、雨季になるとそこから公園の南東にある塩低地「パン」へと散らばって行き、季節ごとに最大200kmも移動します。このエリアのゾウは、現存する全てのゾウの中で最も体格が大きいという特徴がありますが、象牙がもろいため、この大きなゾウの中に巨大な牙を持つ個体はあまりいません。
チョベ国立公園内の公共のキャンプ場はイハハ、サブティ、リニャンティにあり、トイレとシャワー施設が利用できます。それぞれのキャンプ場にはユニークな特徴があるので、全てのキャンプ場に行ってみることをおすすめしますが、ここでもう一度強調しておきたいのは、四輪駆動車が必要だということです。公園内を移動しようとする方は、そこが大自然の中であり、カサネ・マウン間には利用できるサービスがないことを忘れないようにしてください。水や食料、燃料、懐中電灯、予備のタイヤ、工具、ジャッキ、ポンプなどの基本的な装備を整えて入園しましょう。全ての公共のキャンプ場では、予約が必要です。
イハハ
セロンデラのキャンプ場は閉鎖されてしまったため、イハハに新しいキャンプ場がオープンしました。イハハには近代的な施設やすてきな受付所があり、他のキャンプよりも自然の奥深くに位置しています。
サブティ
アフリカで一番、もしくは有数のサファリ天国と言われるサブティは、アフリカ大陸で最も野生動物が密集するエリアの一つです。動物はどの時期にもいますが、一年のうちのある時期になると、驚くべき数になります。ここで十分な時間を過ごすことができるなら(最低でも3、4日滞在されることをおすすめします)、ほとんど全ての主要な動物種を目にすることができるでしょう。キリン、ゾウ、シマウマ、インパラ、ツェサビー、ローンアンテロープ、クロテン、ワイルドビースト、クドゥー、バッファロー、ウォーターバック、イボイノシシ、エランドなど、またそれらを追うライオンやハイエナ、ジャッカル、オオカミギツネ、時にはチーターやワイルドドッグといった肉食動物を見ることができます。
サブティは特に、そこに生息しているライオンやブチハイエナなどの肉食動物で有名です。肉食動物や獲物を探してうろついているハイエナが夜にキャンプサイトを徘徊するため、不快なくらい近くに来ることもあるでしょう。決して餌を与えないでください。夜になるとほぼ間違いなくライオンの遠吠えを聞くことができるでしょう。
サブティには新しい立派なキャンプ場があります。セドゥドゥ側の入り口から172キロ南西にあるサブティ・キャンプ場からは、現在は干上がっているサブティ川の河床(サブティ・チャネル)を見渡すことができます。サブティは地理的に未知の部分が多い地域です。最大の謎の一つは、過去100年の間にどういうわけか何度か干上がっては再び水が流れたサブティ・チャネルそのものです。現在の干上がり期間は1982年から続いています。
リニャンティ
チョベ国立公園の北西の端には、忘れられた楽園、リニャンティがあります。距離が短く細長い、この川岸の湿原は、他から離れた誰もいない場所で、カミガヤツリに囲まれた潟や葦床にそびえたつ木立が彩って、オカバンゴの枯れない水路を彷彿とさせます。
リニャンティ湿原の面積は約900km2であり、湿原に沿って川が流れています。リニャンティ湿原は、合流するクワンド川とリニャンティ川の川筋にはさまれた地域に広がっています。国立公園が川と接しているのは湿原の東端のわずかな区間だけです。
野生動物が豊富に生息しており、特に乾燥した冬季には、川沿いではそこに集まる大群のゾウやバッファロー、シマウマが見られ、森ではキリンやインパラ、ローンアンテロープを見ることができます。圧倒的な数ではないものの、多種多様な鳥類が生息しています。ペリカンをはじめとする水鳥がよく見られます。
リニャンティには、サブティの39km北西に、背の高い水系森林に囲まれた小さなキャンプ場があり、そこからは枯れることのないリニャンティ川を見下ろすことができます。このキャンプ場は主な観光ルートから離れているため、通常他のキャンプ場に比べて静かですが、他から離れたのどかな環境を好まれる方にとっては、乾季に壮大なゾウの群れが見られ、リニャンティは最高の場所です。リニャンティへは、でこぼこした砂道を通らなければならないので、しっかりした四輪駆動車でしか行くことはできません。
カサネ近くのセドゥドゥ側の入り口は、公園内を通ってンゴマ側の入り口に行くことができる54kmの公道にも通じています。ンゴマはナミビアから来る旅行者が利用する入り口で、近くに国境検問所があります。公園の南の玄関口は、モレミ野生動物保護区に通じる道沿いにある、マバベ側の入り口です。マバベ側の入り口はサブティから約56km南に位置し、多くの旅行者はカサネから公園に入り、イハハ、次にサブティでキャンプを行い、マバベから公園を出てモレミ野生動物保護区に入るか、またはその逆の道順をたどります。リニャンティにあるこのルートと魅力的なキャンプ場とは別に、セドゥドゥから南に進み、ノハツァまで68km進み、さらに140km進んでサブティを目指すルートがありますが、このルートは勇敢な旅行者向けです。現時点ではこのエリアを抜ける道にははっきりとした標識はないので、出発前に綿密に道程の計画を練る必要があります。また、公園のスタッフにノハツァエリアに行く予定であることを知らせておいた方が良いでしょう。
野生動物を観察するベストシーズンは、水たまりのほとんどが干上がる乾季です。大雨が降る1月から3月にかけてはチョベ川の川岸は避けた方が良いでしょう。また、公園内では補給用の燃料は手に入らないことにも注意してください。カサネ・マウン間を移動される旅行者の方は、全旅程において自給自足できるようにしておかなければなりません。全ての飲用水は煮沸するか化学処理を施す必要があります。公園全体で蚊が多いので、特に雨季の間は、公園を訪れる前、滞在中、滞在後の4週間、マラリア予防薬を服用することを強くおすすめします。